『カムイ・ユーカラ』
ストレス爆上げだったので、軽いものをと手に取りました。
道産子としていつかは読まなければと思っていたものをようやく読めました。
内容はアイヌの人々のなかで語り継がれてきた童話や神話の一分。
自然を舞台に人生の大切なことを教えてくれたり、うさぎの耳はなぜ長い?など子供が持つ疑問に子供向けに答えをだしてあげる内容など、とてもアイヌの人々らしいなぁ!とおもう内容でした。
動植物全てが神様である中で、熊やフクロウ、イヌが他よりも上位の神であるところも、北海道の自然の厳しさを乗り切る文化が現れている気がする。
- ミソサザイの神
人喰い熊を懲らしめる話。ミソサザイという小さな鳥が知恵と勇気で熊と戦い、それを期に山中の鳥たちが一致団結して熊をやっつけるという内容。相談に乗るサマイクルの神はミソサザイの勇気をたたえつつ、鳥達に結束を促し、自身は敵の弱点をよく観察し、知恵を持って用意周到に熊を追い詰めていく。
童話を通して
- 知恵と勇気をもつこと。
- チームワークの大切さ
- 敵の弱点と自分の強みを知ること
- 用意をしっかりとすること
をまなばせているのかな、と思いました。
- 鼻長ネズミの話
鼻長ネズミが山のみんなに感謝を伝えようと宴会を開こうとする話。
小さい体でなんとかお酒を作ろうとする所や、宴会を開くことで頭がいっぱいになってしまってみんなを呼ぶことを忘れてしまったり、お酒で喧嘩が起きてしまいわたわたするところがとても可愛らしい。
- 小さい体でも人を思いやす大切さ
- 一生懸命でも大事なことを忘れてはいけないこと
を童話を通して伝えている。
- 強情熊の話
友人の龍の神の忠告を聞かずに、好奇心だけで行動してしまい、死んでしまうというお話。
主人公である熊は神で、知恵も力もあるが、自分の力を頼みにしていると痛い目を見るよといった感じ。アイヌの童話だけあって、「自然には勝てないよ」という内容が多い。
- 小さなカワウソの話
取った魚をキツネに横取りされてしまい、怒ったカワウソは力を合わせてキツネを懲らしめるという話。
これまでの話と少し趣旨がかわって、動物の特徴をよく説明している。
カワウソの鼻が潰れているのはキツネにぶたれたから
キツネが赤いのは懲らしめられる時に筋子を投げつけられたから
など。
小さい子供が「なんでカワウソの鼻は潰れているの?」「なんでキツネは赤いの?」と聞いてる様子や、それに童話で答える親の姿が想像されてとてもほっこりする。
- うさぎの話
これも一つ上の話と同じで、うさぎの特徴が説明される。
隣に住むキツネに、凍った湖に穴を開け、尻尾を垂らすと魚がつれる、その時油断すると寒波の神さまが水を凍らせて尻尾が取れなくなるよ、と教わる。
うさぎは言われた通りにするが、うっかり寝てしまい、尻尾は凍りついてしまう。なんとか自力で抜け出そうにも抜けない。妻のうさぎに引っ張ってもらい、ようやく抜け出せました。という内容。
この時うさぎは
自力で抜け出そうとしたから後ろ足が発達して。
耳を引っ張られたから耳が長くなり。
尻尾が凍ってしまって、ちぎれたから尻尾が短くなった。
らしい。『ゴールデンカムイ』というマンガでは、うさぎはもともと鹿のような足をもっていて、鹿はうさぎのような足を持っていた。鹿の足を羨んだうさぎは、鹿を騙して足を交換してもらう。騙されたことに気づいた鹿はうさぎに火のついた松明を投げつけたからうさぎの耳の先は黒く焦げてしまった。という話が乗っていた。
他には、怪鳥クリューの話(自分は強いと思っても上には上がいるという話)やマリリンコ姫(竹取物語ならぬホタテ物語)、カッコー鳥の歌や言葉遊び(なぜ?なぜ?をつなげていく)、強情カワウソの話など、自然を舞台に人生で大切なことを教えてくれる。
ほかには「アイヌ・ラッ・クル伝」という題名で、アイヌの天地創造の話が記されている。
ここではフクロウは夜を見守る神様だったり、イヌは神様を手伝う神だったり、古事記との違いを楽しむのもありだなと思った。